テーマパークと続く冒険
※カービィファイターズZとデデデでデンZのネタバレを多少含んでいます
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「くそー!何だこの難易度はっ!」
―――――アア、やっぱり苦戦しテル!
実に悔しそうに叫ぶデデデ大王を横目に、マホロアは実に楽しそうに笑った。
―――――そりゃあ難しイヨ。難易度ベリーハードのエクストラモードなんダカラ!ソウ簡単にクリアされちゃあボクの面目が立たなイシ。
マホロアがプププランドに密かに作り上げたテーマパークは、今日も正常に開園稼働中であり、純粋にイージーモードを楽しみたい客から、ひたすら高みを目指す貪欲な挑戦者達を待ち構えている。
間違いなくデデデ大王は後者だろう。
最初はちょっとしたリズムゲームだったはずがいつの間にか大規模になり、気づけば高難度のステージが完成されてしまっていた。
それでもデデデ大王はタンバリンを手に、踊るようにリズムを刻んでみせる。
ゴールまではまだまだ果てし無く遠いけれど。
本日だけでも数え切れないほどのステージ落下をおくり、子供みたいに大げさに悔しがってはリベンジを繰り返す。
チャレンジとチャンス、無謀なまでのトライ精神。
諦めればいいのに……なんて語りかける余地を与えない熱意。
つまり、デデデ大王は愚直なまでに真剣だった。
真剣に楽しんでくれている。
そんな彼のことを、マホロアはバカみたいだなんてあざ笑わなかった。
むしろ、自分が作ったゲームにここまで没頭してくれていることに感謝していた。
―――――楽しソウ。ダケド、そんなに全力になるコト?
「あー!裏打ちが足りねぇな。ちょっと休憩だ」
さすがに疲れたのかデデデ大王はステージから離れた場所に豪快に座り込んだ。
マホロアは一息つくデデデ大王の近くまで行き、
「難易度高すギル?もう少し簡単にしよウカ」
いつまでもクリアできず苦戦を強いられている大王を気遣った。
するとデデデ大王は「んなことしなくていいって」と快活そうに笑んだ。
とても眩しい笑顔は屈託がなく、マホロアを少々動揺させるほどだった。
「あと少しで活路が開けそうだからよ。それに、遠慮なんていらないんだぜ。俺様は楽しんでるんだからよ。ゆとりすぎるファンサービスは甘えだぜ?時には本気でかからないとな!」
デデデ大王の言葉に、マホロアはぷっと吹き出してしまう。
「な、何がおかしいんだよ」
「キミってホントーに単純ダネ。熱血バカ」
「うるせぇな……勝負事には熱くなっちまう性分なんだよ」
「ゲームは娯楽の一つなんだカラ、必死になりすぎたらダメダヨ」
「わかってるけどよ、なんだ、その……」
言いづらそうに口をもごもごさせてから、デデデ大王は啖呵を切るように宣言した。
「お前に負けてるみたいで悔しい!」
「……ハ?」
予想外のことを言われ、マホロアはぽかんとしてしまう。
「お前はいつも俺様の壁なんだよ。だからこそ乗り越えなくちゃいけねぇんだ。乗り越えれば、また俺様は強くなるからな!」
一度は偽りの仲間で
一度は本気で戦いあった敵同士で
一度は救い救われた関係で
今はこうして笑い合え語り合える。
変ダナ、と、マホロアは思う。
どうしてボクは今、ここにいれるんだろうか。
改めて思い返すたびに、脳裏には四人の仲間の姿が浮かび上がる。
過ちを犯してぐちゃぐちゃになったマホロアを、助けてくれたのは誰か。信じてくれたのは誰か。
俺様は、俺様達はまた強くなれる!
おバカさん。
これ以上強くなったら、そのぶん苦しい道のりを辿ることになるのに。
だけど彼や彼らは、それさえ楽しんでしまうんだろう。
―――――怖いナァ。キミたちハ。
「アノネ、大王。ボクは嬉しかったンダ」
マホロアはちょっと恥ずかしそうに手袋をはめた手をいじりながら話し始めた。
「何の希望もなくなったボクに居場所を与えてくレテ、ボクの手先を生かしてテーマパークを作ればいいんじゃなイカって提案してくレテ」
「アリガトウって言葉じゃ足りないくライ、アリガトウって言いたイヨ」
「希望なんざまた幾らでも見つかるし、見つけられる。人生何度だってやり直しがきくぜ。それでも駄目なら、誰かを頼ればいいって、言ったんだっけか。まあ面倒なことは飛ばして、俺様がいる限り誰にも邪魔させたりしないさ」
デデデ大王は立ち上がり、胸を張って自信満々に言った。
「何てったって俺様はこの星の大王なんだからな!」
―――――多分、いや間違いナク、コノ大王はバカだ。それも飛び切りノ。
だけど、迷わない心は人を惹きつける。
―――――ああもうマッタク!この星はバカばカリ!
バカばっかりだから、バカを心から愛する者もいる。
マホロアは笑いながら、バカ達が生きる星に思いを馳せた。
◆
「おりゃりゃりゃりゃああ!!」
デデデ大王のリズムゲームのステージとは別のステージにて、カービィは戦っていた。
勝ち抜きのバトルゲームにカービィもまた熱中しているようで、今もファイターをコピーして気合いのパンチを炸裂している。
「あのゲームも楽しそうだよな。しかし何で色違いのカービィがあんなにいるんだ?」
「アレはバーチャルの戦士ダヨ。カービィの体を模造して仮想電子回路を組み込んで立体化シテ、バトルシステムを搭載してるから実際に質量のアル攻撃も可能デ、コストも……」
マホロアの説明がまるで理解できず、それ以前に理解する気も無く、デデデ大王は苦笑した。
「あ、ああわかった。とにかくすごいんだな―――――あっちも楽しそうだよな」
興味深そうにカービィのほうを眺めるデデデ大王を見て、マホロアは一つ提案を思いついた。
それも飛び切り面白そうな提案であった。
「ソウダ!大王。リズムゲームを全ステージプラチナにしタラ、素敵なご褒美をあげるヨォ」
目を輝かせるマホロアにデデデ大王は少しばかり驚いてしまう。
「プラチナ!?んな無茶な、いや無茶じゃねぇ!だけどご褒美ってなんだ?」
「それは自分の目で確かめてネェ―――――ゴールで待ってルネ!」
そう言ってマホロアは心から楽しそうに、空へと飛び上がった。
デデデ大王は「そんならわかった待ってろよ!すぐにゴールに行ってやるからよ!」とその場でピョンピョンジャンプをしている。
―――――コレだからモウ、ストーリーを作るのは楽しイネ!
星の夢を詰め込んだテーマパークは、当分覚める気配を見せなかった。