夜空に咲く花、機械に映る思い出

 

※とてもお気に入りの話です

 

―――――

 

 

 

 上は満天の星空、下は静寂の海。
 闇に包まれた海上だが、空を見上げれば輝く星々が顔を隠すこともなく誰かを見守っている。 
 波の音が静かで、まるで揺り籠のように揺れる。
 季節は真夏。
 灼熱の太陽の陽ざしはしばし休憩を取り、何時でも変わらない月が代わりに瞬く。
 空と海、この惑星に存在する当たり前で、偉大で大いなる、母なる存在。
 決して交わることなく、繋がっているように見えて、とても遠い―――――そんな風景。

 そんな見渡す限りの空と海だけの世界のはざまに位置するかのように、一隻の船が海を悠々と旅していた。
 巨大だがとんでもなく年期が入っており、動いていることが奇跡と言っても過言ではないほど老朽化が進んでいる船だった。
 何故沈まないのか不思議なほど、ボロい。
 お世辞も言えないほど、古い。
 100%の確率で「これどう考えても幽霊船だよなぁ!?」と見るだけで人々を仰天させる雰囲気を持った―――――不死身の海賊船、ブラックスカル号は夜の闇にまぎれて進んでいた。

「いや~絶景絶景!来てよかったよ本当に!」

 不気味な海賊船から場違いなほどハイテンションな声。
 その声の持ち主は甲板から空と海を眺めている。
 紫のカールが目立つ男―――――マルコは、子供のようにはしゃいでいる。

「いいねぇ夜の海!空!もう最高だよねこれを人は〝芸術〟というのか!」

『ピーチクパーチクうるせえ声が聞こえると思ったら、やっぱり手前かよ』

 「昼もいいけど夜もいいねぇうんうん」と自分と会話するように独り言を言うマルコの後ろに、〝骨格〟が突如出現した。
 一般人から見たら〝骨!?お化け!?亡霊!?〟とパニくられてしまうだろう姿をしたあの者は、千年前にここトロピコアイランド一帯で大暴れした海賊王である。
 亡霊船長コルテスは、骨でしかない顔をうるさそうにしかめる。

「やあやあコルテス君。久しいねえ」

 マルコは見た目はとんでもなく凶悪そうなコルテスを見ても全然驚いたり怖がる様子を見せない。
 むしろ親しそうに声をかけている。

『「久しいねえ」じゃねえよ。手前は毎日のようにオレ様の船に無断乗船してるだろが』

「毎日じゃないさ。月末の仕事休みのときだけじゃないか」

『そうだったっけか』

「コルテス君もついに認知症か。……亡霊って病気になるのかい?」

『海に突き落とすぞ』

「認知症には不飽和脂肪酸のある魚が効果的らしいぞ」

『話聞けやっ!オレ認知症じゃねえし!つーか亡霊は病気なんかになんねーよ!手前の耳と脳は繋がってねえのかよ!聴神経が途絶えてんのか!?耳鼻科いけ耳鼻科!』

 下した帆が夜風でパタパタとはためく音が響く。
 夜でも暑い夏だが、海風が涼しくとても過ごしやすい。
 それと一緒に波の音と、二人の会話が静寂な世界を支配する。
 
『まったく……誰だよこいつ乗せたの。コンポビーか?それともバレルか?』

「二人が乗せてくれたんだよ」

『珍しいなオイ。どんな裏手口使ったんだよ』

「人をまるで悪人みたいに言うのはやめてほしいぞコルテス君」     

『じゃあ悪人のような取引をする貿易商だ』

「失敬な!ワタシの取引はいつだって釣り合いが取れてフェアなんだ!」

『どこがじゃ!ヒゲのやつがいた時の取引、あれ全然フェアじゃなかったぞ!?』

「フェアだったぞ!このワタシが言うんだから間違いない!ノープロブレム!」

『手前が言うからこそ説得力がねえんだよ!なにがノープロブレムだ!問題大ありだ!』

「でも結局のところ、このブラックスカル号が再び動くようになって結果オーライじゃないか」

『手前の子孫がドクロジュエル盗んだくせによく言うなっ!』

「まぁまぁ過ぎたことは置いておいて……」

『置くなあああ!罪を認めやがれ!』

「つまり……この船が動くようになったのは、このワ・タ・シのおかげでもあるということだよコルテス君!」

 マルコは鼻高々〔もともと高くて長いが〕にえっへんと胸を張った。
 ワタシの部分を無駄に強調して、とても誇らしげだった。
 コルテスは「こいつの鼻へし折りてぇ……」と言わんばかりの表情を浮かべる。
 今のコルテスなら本気でマルコを海の中に投げ入れかねないだろう。
 だけど亡霊船長は怒りを抑えて、一つ咳ばらいする。 

『……で、今回はまたトロピコアイランドにバカンスか?いいねぇ金持ちは』

「君にだって一杯財産はあるじゃないか」

『あっても使い道なんかねぇよ。今はただの観賞用でしかない』

「そうかい」

『しかしコンポビーをよく説得したな。いつもならバレルが呆れて了承するってのに』

「〝今日が特別〟だからだよコルテス君」

『あ?』

「さてここで問題」

 マルコはにやっとコルテスに笑みを向けた。

「夏の風物詩で夜空に咲く花と言えば?」

『―――――――――…………小学生でも解けるぞ、その超ユル問題』

「正解は?」

『〝花火〟』

「ピンポーン!今日は近年まれにみるゴロツキタウンの花火大会でございます!」

『それがなんで船に乗れた理由になんだよ』

「ふっふっふ……ワタシが〝良いもの〟持ってるから!」

 マルコは目をキラーン!と光らせて、首にかけた紐を引っ張って胸の位置に下がっていた〝良いもの〟をコルテスに見せた。

『なんだそりゃ。文明の利器か?……〝こーがくきかい〟ってやつか?』

「これはね〝一眼レフカメラ〟っていう超レアで超高級品なんだよ!」
 
 


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 マルコはコルテスにこのカメラの出自を、ほぼ一方的に説明した。

 マルコの話によれば、遠くの国の高性能一眼レフカメラが何故かゴロツキタウンに一台出荷されており、貿易商である彼はいち早くその噂を知り、迷わず購入したという。
 お値段は相当張ったに違いない。
 
『そんでこの〝かめら〟とかいうやつは、一体全体どういう代物なんだ?弾丸でも出るのか?』 

「いやいやそんな凶悪兵器なんかじゃないよこれは。ワタシもついこのまえ知ったんだが、いわゆる〝その時見た風景をそのまま残せる〟魔法のような機械なんだ」

『……意味がよくわからん』

「ん~こうやったほうがてっとりばやいかな?」

 マルコはコルテスの顔の近くに行き、コルテスの目にカメラを寄せた。

『お!おい!何する気だ!』

「そのカメラの外側の区切り……レンズからワタシが見えるかい?」

『……んんん?見えるぞ。なんだこりゃ。望遠鏡の度がなくなった見てえな感じがするな』

「今そのレンズの中に映っている光景を、カメラの右側にあるボタンを押せば撮ることができるんだ」

『とる?』

「簡単に言うなら……〝今そこに映ってる光景を現実感のある絵に変えることができる〟んだ」

『いまいちよくわからんな』

「あ、今押さないでくれよ。フィルムが少ししか仕入れられなかっ」

 たから、と言おうとして、マルコは言い終えることができなかった。
 なぜかというと


 いきなり超近距離で超眩しいフラッシュをたかれたからだ。


「ぎょああああ!?」

『うおぉっ!?』

 マルコはあまりの眩しさに悲鳴を上げ、目を押さえてその場でひっくり返った。
 コルテスは自分が行った行動を理解しておらず、ぽかんとしながら持っているカメラを見つめていた。

『お!おいっマルコ!これ発光したぞ!?ここ押したら発光したぞ!?なんだこりゃあ!!』

「だ……だから押さないでって言ったのに……」

『これは目潰し兵器か!?』

「違あああああう!なんでワタシが目潰し兵器を買わなきゃいけないのだ!」

『ん?なんか変になったぞ?』

「ああたぶん画面が切り替わったんだね。さすが超高性能……眩しさも本当に超高性能だ……」
 
 マルコは消えないフラッシュに目をしパたかせながら、立ち上がってマルコのカメラを受け取った。

「今撮った写真がどんな写真か、ここで確認できるんだ」

『て!手前がいるぞ!機械の中に手前が!』

「これを〝撮った〟っていうんだよ。これを現像すれば、絵のように一枚の紙になるんだ」

『何となく納得してきたぞ……。しかし……ひでえ顔だなぁオイ』

 撮れたマルコの顔は、驚きの表情で何ともいえないことになっている。

「コ!コルテス君がいきなりボタン押したからだろ!?」

『こりゃあいい!傑作だ!手前の葬式にこれ飾ろうぜ!』

「遠慮しておくよ!絶対嫌だねっ!!」

『つまり手前はこれをコンポビ―達に売ったということか』

「誰が売るかい!こんな貴重なもの!写真撮ってやるかわりに船に乗せろって取引したんだ!」

『?』

「花火を背景に、〝記念撮影〟してあげるんだよ」

「〝きねんさつえい〟いいい?」

 聞きなれない言葉に、コルテスは思わず繰り返す。
 その時、内部から甲板へと続く階段を上る足音が聞こえてきた。

「何を騒いでいるんだ」

「マルコの旦那がこの船に乗るといつもうるさくなりますね」

 足音の主は、バレルとコンポビーだった。
 仕事をひと段落させて、上ってきたようだ。

「やあやあバレル君にコンポビー君!たった今コルテス君にカメラの説明をしていたところだよ」

『おいバレル、コンポビー。〝きねんさつえい〟って何のことだ?オレは全然わからないぞ』

「マルコが我々の集合写真を撮ってくれるみたいなんだ。なかなか興味深いからな」

『集合写真?……あ、なるほど納得したぜ。たぶん』

「それにしてもこの機械おもしろいよな……まさか一瞬で風景を絵にかえちまうなんて想像だにしてなかった」

「ふふふふ!もっと褒めてもいいぞよ!」

「いや俺が感心してるのはあんたじゃなくてカメラだから……」

「お、始まったみたいだな」

 バレルの声に反応し、全員空を見上げる。
 ヒュルルルル……と頼りない感じの音が空を走り
 パァンと弾けるような音をたてて、夜空に花が咲いた。

「おおおおお~!」

「なかなかいいですねぇ!」

「ゴロツキタウンの花火大会か……もう随分長いこと見ていなかったな」

『いい眺めじゃねえか』

 一発目に続いて二発三発と、連続して花火玉が発射されていく。
 空に大輪を咲かせた色とりどりの花は、見るものを圧倒させ、魅力を与える。

「さ!並んで並んで!撮ってあげますから!あ!二枚目はワタシも映りたいから!」

 マルコの言葉に、コンポビーとバレルは頷いてコルテスの傍まで移動した。

「ここなら花火がちゃんと映っていいだろ」

『おいおい……マジで弾丸でないよなぁ?』

「でるわけないだろっ!さっきも言ったけどこれはれっきとしたカ・メ・ラです!カメラァ!」

「急ですまないなコルテス。嫌ならば抜けてもよいぞ?」

『……ふん!しょうがねえ。オレ様も付き合ってやらあ!』

「コルテス君。本当は映りたくてたまらないくせに」

『手前……!まじで祟られてえかああ!』

「じゃあ一枚いきます!目を閉じたら駄目だから!」

「了解だ」

「うお~自分が映ってる現実感の絵なんて考えられないぜ」

『なっ!まさか先ほどのフラッシュ攻撃か!?』

「攻撃じゃないから!普通のフラッシュだから!あの光は景色を映すときに重要なやつだから!」

『ううむ……いわば魔法の光だな』

「面白い発想だな」

『う、うるさいぞ』

 


「はい撮りますよ~!こっち向いて~!はい!2×1×1×1×1×1×1×1×1×1×1×1×1×1×1×1×1は?」


「「『は!?』」」

 予想外のマルコの発言に、3人は素っ頓狂な声を上げる。 
 うまい具合にハーモニーになっている。

「あ~皆笑ってくれよ~撮れないじゃないか」

『オイちょっと待てぇ!!なんじゃその無駄に長い1の羅列は!1か所だけ2があったけど!』

「聞いてないぞ旦那!なんだよそれ!!」

「2×1×1×1……どう考えても2にしかならんが」

「他国の貿易商が写真撮る前には『こ○らのマーチ』とか『2』とか被写体に言わせてから撮るのがいいと……うま~く笑顔が作れるから」

「あ~母音とかの問題か」

『だったらせめて1+1か2×1にしろやっ!!ややこしいにもほどがある!』

「オリジナリティを極めたくてね☆」

『極めんでいいわそんなもんっ!!』

「早く撮ろうではないか。花火が終わってしまう」

『なんだかんだいって一番楽しそうなのバレル、お前だよな……』

「経験できるものは経験しておきたいものだ」

「はいはいわかりましたよ……じゃあ算数が苦手なコルテス君のために〝1+1は?〟でいくよ」

『手前マジで後で覚えてろよ!!』

「は~いじゃあ~1+1は~?」

 

「2だ」「にぃ」『2に決まってるだろ馬鹿野郎!』


 ―――――いろいろとツッコミたくなる光景だった。


 そしてフラッシュが一瞬だけ甲板を眩しくさせた。

 
「はい撮れました~……って」

 ちゃんと撮れてるかカメラを確認しているマルコの表情がこわばった。

『なんだ?』

「なんか問題あったのか?」

「どうしたマルコ」

 


「……なんで全員笑ってないわけ?」


「「『いや笑ったけど?』」」

 

「え?おかしいな、俺笑ったはずだけど……」

『オレ様も』

「同じく」

「客観的に見たらぜんっぜん笑ってないですけど」

「どれどれ……?」

 3人はカメラを覗きこんだ。
 そこにはマルコの言うとおり明らかに真顔な3人が映っている。
 ……どこの軍の写真だ。

 

「「『うん、いい笑顔だ』」」

「どこが!?あのスイマセン!この場合なんてリアクションすればいいんだ!?」

 

『手前の目は節穴か?よく見てみろよ!バレルがこんなに笑ってんだぞ』

「ワタシの視力が悪くなったとかそういう問題じゃないような気がするよ」

「コルテス船長が笑ってるのってなかなか珍しいぞ」

「ごめん!君たちの真顔と笑顔の区別がワタシにはつかない!」

 マルコはやや青ざめながらカメラを首から外した。

「そ!そうだ次っ!次次次!ワタシも映りたい!」

「じゃあ次は誰が写真撮るんだ?」

『しょうがねえな。オレ様が撮ってやるよ』

「え?いいのかい?使い方わかるかい?」

『さっき聞いたからわかる』

「……コルテス君。なんだかんだ言って君は一眼レフカメラ気に入ってるね」

『……うるさいなっ』

 珍しくコルテスが否定しなかった。
 本当にカメラのことを気に入ったのかもしれない。
 マルコは「じゃあよろしく頼むよ!」と言って、コンポビーとバレルの間に立った。

「さぁ!ワタシの勇士を存分に撮っていいぞ!」

「そんなに俺笑ってなかったのか……?」

「コルテス、よろしく頼むぞ」

『へーへー……さて』

 コルテスはカメラのレンズに3人が映るようにあわせた。
 あとはボタンを押せばいいはずだ。

『ほい。じゃあいくぞ。3-1は?』

「にいっ!」「2っ!」「2だ」

 

『―――――――――――――――お?』


 通常ならフラッシュとともにシャッター音が響くはずだが、それが起こらない。
 コルテスは不思議そうにボタンを押している。

「どうしたコルテス君!早く撮ってくれ!この笑顔をキープするの結構つらい!」

『なんか動かないんだけど』

「なんだって?」

『?どうなってんだよこりゃあ』

 コルテスはボタンをカチカチカチと連続して押す。
 花火の音とクリック音がひどく対照的に聞こえる。

「ちょちょちょ!コルテス君!高級品なんだからそんな風に乱暴に扱わないでくれ!」

『ああなんで動かないんだこいつ!』


 カチ、カチカチカチカチカチカチカチ…………―――――バキッ

 

「ああああああああああああああああああああああああ!!!?」

「あ?」

「あら」

 


『おいマルコ、今こいつ変な音したぞ』

「何してくれんじゃあああああああああああ!!!今バキっていったよね!?バキッて!!」

 マルコは絶叫しながらコルテスのもとに駆け寄り、カメラを奪い取った。


「ぎゃああああああああああああああああああああ!!ボタンが壊れてるううううううううう!!

『あ、マジ?』

「新品壊すとかどういう神経してるわけ!?ていうかこのカメラ頑丈にできてるはずなのにいきなりぶっ壊すってコルテス君すごすぎるよっ!!嫌な意味ですごすぎる!!」

『いや~やっちまったなぁ』

「やっちまったじゃないよ全くもう!!ああ……高かったのに……」

「なんだなんだ?壊れたのか?」

 騒ぎを聞きつけてコンポビー達もこちらにやってきた。

「コルテス君がワタシの一眼レフカメラをぶっ壊しました!!」

『悪気はないぞ』

「わかってるからこそ余計腹が立つんだようっ!」

「壊れた……ということは、さっき撮った写真も駄目になってしまったってことか?」

 バレルの言葉に、少し気を落ち着かせたマルコがカメラのフォルダをチェックした。

「……いや、それは大丈夫みたい」

 写真は無事に残っていた。

「ならよかったじゃないか、ちゃんと集合写真撮れたのだし」

「ワタシが映ってないんですけどぉ!!?」

『あーあーいいだろ別に』

「よくないわっ!!」

「壊れたのは仕方ないだろ」

「コンポビー君みたいにワタシも割り切りたいっ!」

「花火が綺麗だな……」

 落胆するマルコ以外は満足しきったのか、空を仰ぎ見る。
 星の輝く空を飾り立てるように次々に花が生まれては消えていく。

「ワタシも映りたかったのに……」

 願望〔?〕を叶えられなかったショックは大きかったようで、マルコは力無く項垂れる。
 
『……マルコ』

「なんだい……」

『お、思い出っていうのはな、残しておければいいけれど、覚えていれば薄れることないんだぜ?』

「……?」

『つっつまり!今ここでの思い出は、一生忘れなけれ一生オレ達の心の中にあるってことなんだよ!』

「……」

 船が花火の光に影を作ったり消えたりを繰り返す。

「……たまにはいいこと言うじゃないか」

『ふっ……ふんっ!』

「―――――それもそうだな」

 マルコはふっと微笑んだ。

 

「だけどそれでカメラのことがチャラになるわけじゃないからね?コルテス君」

『あ、やっぱり?』


 それでもどこか、二人の間は楽しそうな空気が流れている。

 ブラックスカル号の甲板に、亡霊船長と乗組員と航海士、そして貿易商の影が、花火が輝くとともに映る。

 それはさながら、カメラのフラッシュのように―――――記憶を刻んでいった。

 

 

 花火は打ち上げられて、花を咲かせる。
 咲いては消える。
 それはまるで人の一生のように。
 
 
 だからこそ


 短い人生を美しく大きく、素晴らしいものにしようと懸命に―――――


 命を輝かせるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                     戻る